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子供のヘディングは悪影響があるので禁止?サッカー協会のガイドラインを解説します

ヘディングは脳に悪影響があるのか サッカー

こんにちは!

皆さんは子供のヘディングについての賛成・反対について耳にしたことはないでしょうか?

脳への悪影響を懸念して、数年前からヘディングを規制する動きが海外を中心に見られる中、先日ついにJFA(日本サッカー協会)から育成年代でのヘディング習得のためのガイドラインが発表されました。

今回のガイドラインの要点は、ヘディングを禁止するのではなく、リスクを避けるために正しいヘディング技術の習得を目指しましょうという点です(日本サッカー協会では「正しく恐れる」と表現しています。)。

また、現状ではヘディングと様々なリスクとの因果関係は解明されていないとされています。

このちょっとわかりにくい今回の発表内容について説明していきたいと思います。

ではどうぞ!

サッカー協会のガイドラインの説明

今回JFAから発表された「育成年代でのヘディング習得のためのガイドライン」は幼児期からU15(中学生年代)の育成年代に向けて、ヘディングの技術を習得するために作成されたものです。

方針と背景:海外のヘディング事情が影響

今回の方針をざっくりと説明すると、ヘディングによるリスクを軽減するために禁止ではなく安全な方法で正しい技術を習得しましょうという方針です。

つまりヘディングをするリスクよりも、いざ試合でヘディングしたときに正しい技術が身についていないために起こるダメージのリスクの方が高いので、ちゃんとヘディングの練習をした方が良いということです。

ヘディングに関連するリスクは、ヘディングそのものの他に、相手と競り合った際の接触や、着地に失敗したときの負傷も考えられるので、確かに技術を身につけることは理にかなっていると思います。

僕もサッカーをしていますが、ヘディングで怖いなと感じるのは、実はサッカー経験がない人と競り合うときだったりします。

このタイミングでガイドラインが作成された背景には、海外のヘディング事情が影響しています。

イングランド・スコットランドサッカー協会ではヘディング禁止、などのガイドラインが策定されていて、アメリカでは既に何年も前から練習やヘディングの禁止または制限がされています。

このような動きは、イングランドの元プロサッカー選手ジェフ・アストル氏が長年にわたってヘディングをし続けたことによる慢性外傷性脳症でなくなったことや、英国グラスゴー大学の研究で、元サッカー選手の認知症死亡リスクが一般人より3倍以上高いという結果によるものです。

FIFAやUEFAもそれぞれ定年齢層に向けて軽量球を使用するなどのガイドラインを示しています。

ヘディングを禁止ではなく、正しい方法を身につける

脳への影響があるかどうかは判断が難しい

では実際にヘディングが脳に悪影響を与えているのかといえば、JFAはその限りではないというスタンスです。

ヘディングの反復が認知機能に及ぼす影響の検証は非常に難しく、禁止の根拠となっている研究も、他の要素 との関連の判断が難しい。検証には引き続きの研究が必要である。

引用:JFA「育成年代でのヘディング習得のためのガイドライン」

また参考データとして、Jリーグの過去4年間の負傷のうちヘディングによる脳震盪(のうしんとう)は約1%、しかも単独のヘディングより競り合いや頭同士の衝突、地面との衝突の方が頻度が高いという結果です。

子供の場合大人と比べるとヘディングのプレー回数は少なく、ボールスピードも遅いので、体にかかる負担が小さいといえます。

脳に直接的な影響があるというよりも、危険な方法での接触や着地の際にバランスを崩したりして負傷するリスクの方が高く、正しい技術を習得するというのは合理的な選択です。

実際僕が指導している小学3年生はまだボールが怖くてヘディングができない子が多く、目をつむる→顔をそらす→顔面にボールが当たるということもよくあります。

これらのことから言えるのは、子供はそもそもヘディングの機会が少ないので、脳に影響というよりもそれ以外のリスクの方が高いということです(特に低学年の子)

JFAが推奨する練習方法:浸透するかどうかがカギ

今回のガイドラインでは、各カテゴリーごとに推奨する練習方法が示されています。

出典:日本サッカー協会

年齢が下がるほど、柔らかく軽いボールを使って、

キャッチ ➡︎ 頭に当ててみる ➡︎ ボールネットを使う ➡︎ バウンドしたボールをヘディング 

というように徐々に負担をかけていくような練習方法が記載されています。

実際にヘディングをするのではなく、タイミングや、ボールが額に当たる感覚、落下地点の入り方が身につくような内容で、なるほどと感心するところもあります。

一方でどれだけのチームがこの練習方法を実行するのか?という疑問は残ります。

確かにこの練習でも技術は身につくと思いますが、例えば6年生ではジャンプヘディング10回程度が目安となっているのですが、背の高い選手のいるチームではセットプレーからの得点は当然狙うだろうしそのためのトレーニングは当然のようにするはずです。

アメリカのように試合でヘディングが禁止されていないのであれば、ヘディングを戦術のひとつとして重要なプレーと考えるチームがあっても不思議ではありません。

個人的には、このガイドラインを浸透させていくのであれば、推奨されるトレーニングと並行して、キーパーからのパントキックは禁止、スローインではなくキックイン(浮き球禁止)等のルールとセットにした方がより効果があるんじゃないかと思っています。

元代表選手のインタビューより抜粋

ガイドラインには元日本代表選手のインタビューも収録されています。選手名や年代はわからないのですが、その中で気になったものを一部抜粋します。

(元日本代表のインタビューより抜粋)

・サッカー以外のスポーツをしていたことも関係あると思う。ー(ヘディング上達のコツを問われて)

・ジャンプしなくてもシンプルな動きでいいポジションが取れれば、大きい選手と競り合わなくてもよい。ー(ヘディングの難しさと克服の方法を問われて)

・幼少期からめいっぱいやる必要はないが、やらなくていいものではないと思う。ー(ヘディングの指導はどうあるべきかと問われて)

・最近の選手は足元のテクニックはうまいけれどヘディングは下手だと感じる。

・小さいころ(身体が柔らかくお互いの力も弱い)にコンタクトプレーをしていると、成長してからの怪我が少ないのではないか、またコーディネーション、回避能力が身につく。

・ヘディングのリフティングの回数と試合でのテクニックとは全く別物。

まとめ

今回のガイドラインではヘディングの技術自体が重要としながらも、推奨する練習内容はかなり制限される内容となっています。個人的には空中に浮いているボールをヘディングしないという状況はかなり違和感を感じます。

毎回長時間ヘディングの練習をする必要はないと思いますが、基本的な技術を身につけた上で試合でのヘディング回数規制等は設けないようにするのが自然な流れかなと思っています。

今回は育成年代のヘディングに関するサッカー協会のガイドラインの説明でした。

ではまた!

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