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【レビュー】サッカーで子供をぐんぐん伸ばす11の魔法

サッカーで子供をぐんぐん伸ばす11の方法 サッカー

少年サッカー関連の書籍としてはよく見るタイトルだったので、いつか読んでみたいと思っていた「サッカーで子供をぐんぐん伸ばす11の魔法」

ちょっと特徴的なタイトルですが、中身はとても真面目な内容です。

最初にお断りしておくと、「少年スポーツは精神論ありき」という人にはこの本は向いていないです。

子供に起きている問題を”しかる”以外の手段で改善するための方法が書かれた良書です。

著者の紹介

この本の著者である池上正さんは、Jリーグのジェフ千葉や京都サンガで指導した実績がある、育成年代指導の専門家です。

ジェフ時代には当時のオシム監督も在籍していて、その当時のことも著書に書かれています。また大阪出身ということもあり、本の中にもぽつぽつと関西弁が出てきます。

大阪体育大学卒というゴリゴリ体育会系のイメージと本の内容のギャップが面白いです。

サッカー本というより『教育書』

この本のタイトルは「サッカーで〜」とありますが、サッカーの技術論や練習方法などはほとんどありません。どちらかというと教育書に近い内容。(もちろんちゃんとサッカーの話がいっぱい出てきます)

なので、

「魔法のような練習メニューが11個もあるんだって!」

と期待して読むと肩すかしをくらいます。

しかしガッカリすることはありません。なぜならこの本には練習メニューよりもはるかに効果的に子供を成長させる方法が書かれているからです。

著者はこの本の中で、「小学校年代は子供にサッカーを楽しませることが大切だ」と説いていて、タイトルにある「11の魔法」は子供にサッカーを楽しませるための11の方法と解釈することができます。

「育ち方が違う」スペインの子供

この本の冒頭に、スペインにあるヘタフェというチームの下部組織の練習試合を見学した時のことが書かれています。

驚きました。幼稚園年長の6歳児が、絶妙なタイミングでパスをします。ボールを受けたらドリブルし、相手がきたらポーンとサイドでフリーの味方にパスをするのです。日本の少年サッカーとは明らかに違いました。

本文中より引用

その理由を、幼少期から一流のサッカーを見て育っているため「育ち方が違う」からとしています。

これは文化の違いとも言えます。欧州や南米と比べ日本のプロサッカーの歴史は明らかに浅く、スタジアムに試合を見に行き始めたのなんてJリーグが開幕してからなのでこの30年くらいのこと。

しかもどちらかというと「熱狂的な」方々が観戦している印象が強く、まだまだ子供がサッカーの試合を見に行くのは特別なイベントに近い感覚です。

そのうえスペインの子供たちが普段見ているのはリーガ。世界中のスーパースターが真剣勝負を繰り広げる世界有数のサッカーリーグです。

単純に見ている試合の質が違うだけでそれほどプレーに違いが出るのかは疑問ですが、スペインの子供達の方が日本の子供と比べてレベルの高いサッカーをよりたくさん見ているということは間違い無いでしょう。

ではこれからJリーグのレベルが上がって、質の高いサッカーを見る機会が増えれば、日本の子供も同じように6歳児でもポンポンパスが回るようになるかと言えば、そう単純な話でも無い。

日本でのジュニアサッカーの指導は、コーチのさじ加減ひとつでサッカーの方向性が大きく変わります。いくらレベルの高いサッカーを見たとしても、チームの方針によっては全く違うサッカーを要求されることが多いのです。

中途半端にサッカーをやっていた人が一番危ない

「中途半端にサッカーをやっていた人が一番危ない」

本文中に出てくるこのフレーズに正直ハッとしました。

ここでいう中途半端というのは、プロまたは実業団以外(Jリーガー、海外リーガー、JFL以外)なので、サッカー経験者を名乗る大半の人が当てはまります。(←僕もです)

なぜ中途半端にサッカーをしていた人が一番危ないのかというと、選手としての経験や知識があるので、子供の理解度を確認しないまま、専門用語で伝えたつもりになっているからだとのこととです。

また、自分が指導された経験を引きずっていて、昔ながらの指導から抜け出せないのだとも。

確かに僕の周りでも、試合に負けたら罰としてグランドを失点×10周とかやってるチームが未だにあります。

サッカー未経験の人にこそおすすめしたい

この本は2008年初版なので、すでに出版から10年以上経過しています。

「子育てにも役に立つ」とか「会社のマネジメントにも応用できる」というレビューもみられますが、僕はこの本をサッカー未経験の保護者向けの本だと思いました。

この本に書かれた11の魔法には、サッカーをしている子を持つ親なら誰もが心当たりありそうな事例がたくさん出てきます。

サッカー経験者だと、「いやいや、俺が教わってた頃は・・・」などと経験が邪魔しそうですが、著者が言っているように

「サッカーのことはよく知らないから、俺は何も言えないよ。みんな頑張ってな!」

っていう方が実はうまくいくんじゃないかって気がします。

全部で200ページちょっとと読み切りやすいボリュームになっているので、是非読んでみてください。きっとあなたも子供の気持ちを理解できるようになりますよ。

ではまた!


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